イベントレポート

第4回世界遺産コンサート part-2
東儀秀樹 世界遺産音楽の旅路
~村人たちとともに祝う サフランの実り~

サフランの収穫を祝う、小さなまちの音楽会

“懐かしさ”という感情についてしばしば考えることがあります。ことに訪れた土地でじわっと胸が締めつけられる、あの感覚です。
何千キロもはなれ、歴史も街の成り立ちもまったく異なっているにもかかわらず・・・です。
遥か東方からイスタンブールをめざした人々にとって、ここまできたらあともう少し、という安堵の気持ちになれた、古代からのシルクロードの中継点。
イスタンブールにつづく世界遺産コンサートの開催地となるトルコの北部、黒海に近い街カラビュック県サフランボル。
サフランボルの名前の由来は香料のサフランの集積地として発展した歴史によりますが、そのエピソードひとつで、グッとこの街に親しみがわきます。
サフランの花言葉は「陽気、楽しみ、ひかえめな美しさ」だそうで、その言葉どおりの人とたたずまいの街です。
5000年近い歴史をもち、黒海と地中海とを結ぶ交通の要衝であったサフランボルは、かつてはラクダを連ねたキャラバンの宿場町として繁栄したそうですが、20世紀の鉄道の時代がこの街を衰退へ導いたといいます。しかしこの街は幸運でした。なぜならばオスマントルコ時代には独立独歩で閉鎖的な社会経済を営み、近代の鉄道の時代にあってはとり残されたおかげで、皮肉なことに昔をそのまま今に残すことができたからです。

さてここでのコンサートはイスタンブールとは趣をかえて、小さな街の音楽会といったイメージです。
トルコも日本と同様に時期は秋、ちょうどサフランの収穫期にあたります。
このサフランの収穫を街の人たちとともにお祝いしましょう、というのがここでのコンサートの主旨です。


昼間は街中でのミニミニコンサートです。
創作和太鼓「匠」のみなさんによる歩きながらの演奏時には、ハーメルンの笛吹よろしくたくさんの子供や大人たちがそれに連なっていきます。リズミカルで勇壮な和太鼓の音はやはり日本の誇る伝統の音であり、同時にリズムは地球をめぐる共通言語であることを再認識しました。
大久保眞さんの指揮による「世界遺産コンサート合唱団」の皆さんの日本の歌曲には、この街並みが不思議なぐらいマッチしていたのが印象的です。

民族舞踊団の歌と踊りが終わると、愛らしい地元小学校の女子児童たちから出演者一人一人にバラの花が贈呈されました。
両国の国旗が各所に飾られ、誠に心からの歓迎をいただきました。
小さな街の音楽会はこのようにはじまったのです。

旧迎賓館敷地内特設会場でのコンサートは星が輝きだす頃、創作和太鼓「匠」の皆さんによる演奏で幕をあげます。イスタンブール、アヤ・イリニ教会の開幕前のエントランスで、そしてサフランボルでの「匠」さんの演奏には多くのトルコの方々が酔いしれました。

続くステージは地元の男性舞踊団Safranbolu Erkekler Folklor Ekibiと女性舞踊団のSafranboll Bayanlarの方々です。
古くからこの地方に伝わる結婚式の流れを舞踊に取り入れたパフォーマンスをご披露くださいました。
トルコの民族舞踊は、国全体では数えきれないほどの数があると聞いています。やはり多くの民族との出会いによって国が形成されてきた歴史がそれを物語っているのでしょう。とても貴重な歌と踊りの数々でした。

次に、大久保眞さん指揮による「世界遺産コンサート合唱団」の♪ふるさとの四季♪のメドレーです。

冒頭にも書きましたが“懐かしさによる感情”を抱かせるこの街で聴く日本の心。物質的な目的を超えて人としてこうありたいと願う共通した精神性を発見した思いです。

地元のメインゲストはサフランボルを中心に活動している歌手ギョクハン・クルダルさんです。彼は古代トルコ人が使っていたといわれるタンバリンにも似た楽器ひとつをたたきながら歌います。雷や雨、風といった自然現象から啓示を受けて紡ぎだされる言葉を歌にしていきます。この演奏と唱法にはどこか、地球上で営むあらゆる土着の民族に共通する響きをもっているように感じられました。
きっと宇宙(神)への祈りやメッセージなのでしょう。

そして最後のコーナーは東儀さんです。
♪異郷の風♪♪三ツ星♪風のうた♪♪春色彩華♪と続きます。
東儀さんの演奏の途中に空を見上げると、満天の星々に混ざりまん丸の月が煌々と輝いていました。
雅楽の楽器である篳篥(ひちりき)や笙(しょう)や龍笛(りゅうてき)は、天と地と空、つまり宇宙を表現し同時に自然界のすべてを感じる音であるという東儀さんの言葉を思い出しました。

ギョクハン・クルダルさんの宇宙と自然に対する畏敬と真摯さにも似てひかえめであり、感謝を忘れず、自然に耳をかたむけ、宇宙に包まれた街。サフランボル。

小さなまちの音楽会は ♪Halay(ハライ)♪ というこの地方でよく知られるフォークソングで出演者と客席が一体となって幕を閉じました。

最後になりますが、イスタンブールとサフランボルの総合司会をつとめてくださった高野あゆ美さん。高野さんはトルコで最も有名な日本女性あり女優として活躍されています。
トルコでの公演は「2010年トルコにおける日本年」の参加企画として実施されましたが、このプロジェクトの親善大使としてご多忙の中、この大役を引き受けて下さいました。この場をおかりして深く感謝いたします。
そしてこのコンサートの実現にご尽力下さったすべてのトルコと日本の関係者の皆様に心から御礼を申しあげます。ありがとうございました。

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文/伊澤信義(総合演出)
写真/戸村廣
開催日程:
2010年(平成22年)10月25日(月)
実施会場:
トルコ共和国カラビュック県サフランボル市 旧迎賓館敷地内特設会場及び旧市街パフォーマンスポイント)(1994年世界遺産登録/サフランボルの旧市街として)
出演:
日本側/東儀秀樹(雅楽師、音楽家)、東儀九十九、東儀雅美
大久保眞指揮世界遺産コンサート合唱団、和太鼓「匠」
トルコ側/ギョクハン・クルダル(民族音楽家)、
Safranbolu Erkekler Folklor Ekibi(男性舞踊団)、
Safranboll Bayanlar(女性舞踊団) 他
総合司会/高野あゆみ(トルコ在住女優)
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